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西洋近代主義批判のための覚書 近代思想の中心概念について

近代主義の超克を試みるにあたり、近代主義の中心概念を”いかに避けるか”の覚書


・生活化されていない近代主義の超克

上記の文で中心概念と書いてあるが、これこそまさに近代主義的一文といえる。
”中心”概念や、”本質”の追求が、近代西洋哲学の”本質”であり、近代主義は基点、定義、法則といった思想基盤、知(Wissenschaft)に対する信頼(信頼を獲得するための探求を含む)から成り立っている


これらはポスト・モダニズム”運動”によって「思想界では」克服されたものとされているが、
今日の一般的生活者が、ポストモダニズム的世界に生きているとは、到底思われない。
(我が国における平和で異常な熱狂時代:西暦1980年代を中心とした時代には、ポストモダニズム的と想われるような見かけをした遊戯的人種が跋扈はしたけれども。)

思想史における近代主義の超克への努力は、最重要視されるべきものではあるけれども、
シュル・レアリスムの世界にわれわれが生きていないように、知識人や芸術家が志向したポスト・モダニズムの世界は未だ「生活化」されていない。

・真善美の合一、及び「自我(Ich/ich)」

思想的に最も覆し易い近代思想の中心概念は「真善美の合一」ではないだろうか。
…と書くと思想史家に怒られそうだ。
現代から見て思考実験をしてみると疑う手がかりがみつけ易い概念、としておこう。

ギリアシアからキリスト教を経て、素朴な近代主義的発想の根本にあるこの概念は、
本質主義と神(God/god)超越的価値概念への批判の手がかりとして19世紀後半には既に「思想史的には」解体されていると言って良いがしかし、今日の世界でも未だ強固に生き残っている、という点で、ポスト・モダニズムが生活化されていない良い一例であろう。

「真なる事は即ち善であり美である?そうじゃない場合もあるじゃん」
と、生活者は、考える事は出来る。しかし著名で、非常に尊敬するべき国家論者ですら、真善美の合一を未だに唱え、その思想の中心に据えているという現実もまた一方で厳然として存在している。

更に厄介なのが自我の問題である。
真善美の合一と同様、自−他の二元論は「思想的世界では」超克され、あるいは解体され、あるいは”無視しても構わない構図”として”解決”されてしまっている。

分析哲学やハイデガーの功績、精神分析について全く知らなければ、近代主義の超克というコンセプトすら頭に浮かばないかもしれない。

しかし、「私」の問題は未だ生活者の生活哲学的態度の中では重要な位置を占めているし、そのような個人的世界以外でも、自−他二元論は「分かりやすい世界の説明」として今日の生活における「前提」とされている。


・迂回の試み

以上は分かりやすい例であって、思想界では乗り越えられていても生活世界ではむしろその基盤を成している近代的な思想(概念・コトバ)というものは、発掘分類、展示すれば、切りがないほどであろう。
事に、超越的価値と自我の分析は、近代主義の超克に欠かせないと思う。

所で、いつも覚えておいて置かなければならないのは、
デカルト的態度で言及される”自我”とは常に自省的な態度(哲学的・学問的態度)において「存在する」”私”なのであって、それは生活者が常に経験している「モノ(存在者)」ではない、という事だ。

生活者はむしろ主に自−他の混在する非・自省的な世界で生きているのであって、時に個々人が超越論的態度で”自省”をするとしても、人の住む社会はそのような無自覚な意図(行動)の総体として振る舞う。

当面、本稿では実際の政治や文化を手がかりに、その具体の事象を分析するという手段で、
こんにちの世界に隠された近代性を見つけていきたいと考えているので、自我概念の解体といった−皮肉に言えば−本質的な議論を迂回したい。以上は、単なる表面的なニュース批判などに陥らず、常に、西洋思想が試み続けた思想的成果を忘れないようにするための覚書である。

中野剛志の提唱する「デフレ・レジーム」から。”レジーム”というワードについて

 政治に関心のあるネットユーザーにとって、今やアイドル的な存在ともいえる中野剛志氏が提唱している「デフレ・レジームからの脱却」に関して。

 中野剛志氏やその思想を共有する人々が「デフレ・レジーム」と名づけ、いくさをしかけている相手は強大で、非情に頑迷な意思をもち、堅牢な砦の中に居て、しかも世間の大半を味方につけて(洗脳して)いるという事は肌で理解できる。
 また、日本国における目下の経済的・思想的課題がデフレーションである事も明白である。
 以下は、”レジーム”というフレーズが惹起させる思想的背景についての覚書であり、経済問題上の何らの手がかかりも、政治的な何らの突破口も見出そうとするものではない。

・儚く終わった第一次”戦後レジームからの脱却”

 「○○レジュームからの脱却」と聞いて思い出されるのは、第九十代安倍晋三内閣が掲げた”戦後レジームからの脱却”である。おそらく中野剛志氏も、デフレ・レジームという言葉を選んだ時、かつて安倍内閣が掲げたこのキャッチ・フレーズを想起させるよう、戦略的に言葉を用いたのではないか。

 平成十八年(2006年)安倍内閣が掲げた”戦後レジームからの脱却”という理念は、戦争を知らず、かつ敗戦史観から目覚めた/染まっていない世代の日本人にとって、彼らの生活や二十世紀後半の我が国から消え失せてしまった「大きなものがたり」を再発見させるに足るほどの、魅力的な理念であった。そしてそれは、その世代にとってみればほとんど初めて政治権力側から提示された魅力的な理念でもあった。
 
 前代の小泉政権下で靖国参拝や拉致関連問題などを通じ、特定アジアに媚びない”ポーズ”を取るだけで溜飲を下げるという経験を経て、インターネットの普及もあり自虐的な世界観から脱却しつつあった「新しい保守層」にとっては、拉致問題が未解決であり、北京オリンピックを控え共産党中国が台頭するという世界情勢の中、脱媚米も含めた保守政権が誕生し”戦後レジームからの脱却”を唱えることは、むしろ自然な成り行きであったといって良い。(もっとも、「消えた年金」などという下らない搦手から倒閣、保守主義者は続く福田・麻生内閣下で苦しみ藻掻くも、結局は当代イチのバカが内閣総理大臣となるという、涙も出ないオチが待っているのだが)

 しかし、上記で言う『敗戦史観から目覚めた/染まっていない』日本人などというのは平成二十四年現在でも少数派である。安倍内閣発足当時、「美しい国」「戦後レジームからの脱却」という理念が大方の日本人に冷笑と無関心をもって迎えられた風景を、私は忘れることができない。それは、歴史に対する徹底的な無理解と、汚泥のような現状に安穏とする性根が生み出す、戦後ニッポン人の表情そのものであった。

 卑近な話をすれば、そもそも「レジーム」といっても大方のひとには何のことだか分からない。
 それは別段大衆が愚かであるという話ではなく、少なくとも新しく発足した時の政権が掲げたキャッチ・フレーズなのであれば、それを解題し、解説する役割というものがあって、現代ではそれを主に担うのがマス・メディアなのである。
 しかし安倍内閣発足後のマス・メディアが取った態度と言えば…なにをか言わん…
 どこから書けばいいのか、絶句するほどのマスメディアの狂態ぶりは「戦後レジーム」の解題など思いもつかないものであって、ここであげつらう気力も失せるものであった。
 結果、戦後レジームという言葉が大衆に理解されることはなく、安倍内閣が掲げた理想は(無視できない功績はあげたものの)中途半端な形で頓挫した。

 90%のバカと10%の反国家主義者で構成されるこのマス・メディアこそが、”戦後レジームからの脱却”というキャッチ・フレーズを国民に理解させることを阻む主体であり、現代日本における内実としての「戦後レジームからの脱却」を妨害する主犯である。
 今日、首相退陣の経緯も含め「安倍内閣」というコトバすら−九割方の日本人には−冷笑と共に記憶されているという現状がある。

 キャッチ・フレーズとしての”戦後レジームからの脱却”は一旦葬られた。我が国が「戦後レジームからの脱却」に向けて胎動し、敗北に終わった歴史の一項として記憶されるべきだと思う。
 無論「戦後レジームからの脱却」に向けたいくさは現在も続いており、最終的な勝敗は未だ見えていない。



・「アンシャン・レジーム」とは


 「デフレ・レジーム」が「戦後レジーム」を想起させるのと同様に「戦後レジーム」というフレーズが提唱された安倍政権発足当時、私が思い出したのは高校の世界史で覚えさせられた”アンシャン・レジーム”という言葉とフランス革命だった。(高校生の私には「カノッサの屈辱」や「レコンキスタ」「トゥール・ポワティエ間の戦」「墾田永年私財の法」と同様、答案用紙を埋める語でしかなかったが)
 それはさて置き、戦後レジームからの脱却という言葉を使い始めたのが誰なのかは知らないけれども、それを唱える時フランス革命が念頭に無かったとは思えない。
 
 フランス革命によって打ち倒された”アンシャンレジーム”=旧体制、旧秩序とは、当時のフランスにおける絶対王政の事ではあるが、そこで倒されたのは一国の特殊な政治体制というだけではなく、”西洋近代的史観で言うところの”封建秩序一般なのであって、フランス革命という事件は西洋近代精神の結実としての民主主義制度の誕生を意味する。
 
 中世〜近世〜近代〜現代といった、世界史的時代区分について論考する事は大事だけれども、それは主題ではない。
 非情に乱暴にまとめると、フランス革命におけるアンシャン・レジーム=旧秩序の破壊とは、近代合理主義勢力による非近代合理主義体制の打倒である。
 ギリシア古典の再発見からフランス革命を経て今日に至る西洋合理主義というものが、我々日本人にとって最も批判・点検されるべき「主義(イズム)」なのであるとするならば、旧秩序を打倒したフランス革命とは、その西洋合理主義が歴史の主役となった一幕として重大な意味をもっている。



・フランス革命の「レジーム」と戦後レジーム、デフレレジームの構造


 ここで皮肉な事実に気づくのは、
 「戦後レジームからの脱却」と言う時、その言葉が指す「レジーム」が、フランス革命当時アンシャン・レジームを打ち破った西洋近代主義そのものを思想的背景に持つということだ。

 戦後レジーム、すなわち日本における戦後民主主義は、近代西洋合理主義が最も極端に発現した一例である。
 この事は拙ブログの主題の一つであり、別項でも不断に論考する必要があるけれども、「戦後レジーム」そのものが「アンシャン・レジームからの脱却を図った近代合理主義」に浸かりきった代物であるという事は繰り返し考えてみたい。

 簡単にまとめると
1,フランス革命の「旧レジーム対新レジーム」という場合のレジームとは、一国の体制・秩序のみならず、思想史上のレジームをも意味する(と私は主張する)
2,「戦後レジームからの脱却」という場合のレジームとは、大東亜戦争敗戦後から今日に至る我が国の(主に敗戦史観に基づいた)社会体制と思想背景を指し、それは1,でいう「新レジーム」の一部分である。

そして、「デフレ・レジーム」とは2,のレジームのさらに一部分を為す。 
中野氏の提唱する「デフレ・レジーム」とは政策レジームの一種である。

 アメリカの経済学者ピーター・テミンは、「政策レジーム」という概念を用いて、世界恐慌というデフレからの脱出過程を分析しています。
 「政策レジーム」とは、政府や中央銀行といった政策当局が実施する政策の体系を指します。
(中略)したがって、もし人々の行動を大きく変えようとするなら、政策レジーム自体を大きく変更しなけれればなりません。一部の施策を変えるだけでは不十分で、全体の体系を大きく転換して、人々に政策レジームが新しくなったと信じ込ませなければならないのです。


(中野剛志『レジーム・チェンジ』NHKw出版)

 疲れたので一足飛びに結論を書く。
 デフレ・レジームという政策レジームは、単にひとつの政策手段ではなく、戦後レジームという思想レジームを背骨に持っている。そして戦後レジームはフランス革命以降世界を席巻した近代合理主義というレジーム(秩序)の落とし子である。

 デフレ・レジームからの脱却と言う場合、安易に「ならばインフレ・レジームにすりゃあいいんだね」なんて発想をする人がいるだろうか?

 デフレ・レジームにかんする考察は、戦後レジームへの批判、および近代合理主義への批判がその根底問題として絶えず提起されているものと考える。
 デフレ・レジームからの本来的な脱却は、戦後民主主義、更には西洋合理主義批判から生まれるものである。








  

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(禁煙ファシズムにNO!)きせる愛好会 会長
在日特権を許さない市民の会 会員
名も無き市民の会 協賛会員 New!

尊王維新靖国護持田沢隊 隊士
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出来る限り平易なコトバで読み、聞き、考え、書き表したい。
だからわたしは、市井の哲学者。

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